来年始まるこどもNISA、親がやってあげようか——でもそれって、本当に子どものためになるのかな。そんなふうに手が止まっていませんか?
「お金は親が増やしてあげられる。でも、自分で働いて、投資して、増える喜びも減る痛みも味わう経験は、親には代わってあげられないのでは」——正直に言うと、私自身がこの問いでずいぶん悩みました。
私は小学校の教員を30年勤めて早期退職し、いまは2級FP技能士として、高校生の娘のお金の教育に向き合っている母親です。FPの頭は「親がやるべき」と言い、教員の心は「本人にやらせるべき」と言う。この記事は、その両方の立場で悩んだ末にたどり着いた、我が家の答えです。
この記事でわかること
- 「親がしてあげるか、本人にやらせるか」で悩む本当の理由
- 両方を叶える「二階建て」という考え方
- 高校生の子供を持つわが家が出した結論
悩みの正体は、ふたつの願いをひとつの口座で叶えようとしていること
まず、この悩みを整理してみます。親の心の中には、ふたつの願いが同居していないでしょうか。
| 願い | 中身 | 正しさ |
|---|---|---|
| 渡したい | 非課税で、早くから、複利の力を借りて子どもに資産を残したい | お金の面ではとても合理的 |
| 育てたい | 自分で稼ぎ、自分で選び、減る痛みも知る経験をさせたい | 教育の面でとても大切 |
どちらも正しいんです。だから悩む。
でも、よく見てください。このふたつは「資産を渡すこと」と「経験を育てること」——そもそも別の話なんです。別の話なら、ひとつの口座で両方を叶えようとしなくていい。ここに気づいたとき、私の中で答えが見えてきました。
答えは「二階建て」——1階は親のバトン、2階は本人の実験室
我が家がたどり着いたのは、お金を二つの階に分けるという考え方です。
| 1階:親からのバトン | 2階:本人の実験室 | |
|---|---|---|
| お金の出どころ | 親(こどもNISA・贈与) | 本人(お小遣い・バイト代) |
| 金額 | 大きくてよい | 小さくてよい |
| 誰が決める | 親(インデックスで淡々と) | 本人(選ぶのも失敗するのも本人) |
| 役割 | 家の資産の引き継ぎ | お金の経験を育てる場所 |
1階は、親が堂々とやっていいと私は思います。これは教育ではなく、家から子への資産のバトンリレー。早く始めるほど非課税と複利の恩恵が大きいのは、FPとしてはっきり言える事実です。
ただし、ひとつだけ条件があります。隠さないこと。 年に一度でいいので、通帳と評価額を一緒に見て、「今年は増えたね」「今年は減ったね」と話す。子どもが口座の存在を知らないままだと、税金の面でも「名義だけ子どものお金」と扱われかねませんし、何より教育の機会がまるごと消えてしまいます。
そして「減る痛み」の出番は、2階です。
考えてみてください。親が入れた60万円が2割減るのと、自分がバイトで稼いだ5,000円が2割減るのと——痛いのはどちらでしょう。金額は120倍違うのに、心に刻まれるのは後者なんですよね。自分の汗のかかったお金だから。
教育に必要なのは大きな金額ではなく、自分の判断で選び、自分の心で上下を感じること。それなら、2階は小さくていい。むしろ小さいからこそ、安心して失敗できます。
我が家の場合——高校生の子供と、悩んだ日々
我が家には高校生の子供がいます。小さいころからジュニアNISAを少しだけやってきて、来年こどもNISAが始まったら移してあげようか、というのが悩みの始まりでした。
「私が全部やってあげたら、この子は増える喜びも減る怖さも知らないまま大人になるんじゃないか」——教員として30年、子どもは失敗から学ぶ姿を何度も見てきただけに、ここが引っかかって仕方なかったんです。
ふっきれたのは、自転車の練習を思い出したときでした。
補助輪をつけて、後ろを支えて伴走して、あるとき手を離す。転ぶのは練習用の自転車の上でいい。「転ぶ経験が大事だから」といって、家の引っ越し荷物を子どもの練習用自転車に積む親はいませんよね。引っ越し荷物(資産のバトン)は親が運んでいい。練習用の自転車(本人の少額投資)で、思いきり転べばいい。そう分けて考えたら、罪悪感がすっと消えました。
それに、実のところ——1階のお金でも、子どもはちゃんと「減る経験」をします。長く投資を続ければ、暴落は必ずどこかでやってきます。自分名義の口座の数字が3割下がるのを18歳や20歳で見る。親のお金が原資でも、あれは十分に痛くて、十分に学びです。私たちが暴落のたびに学んできたのと、同じように。
よくある質問
Q. 親が子どものNISAにお金を入れたら、贈与税はかかりませんか?
A. 贈与税には年間110万円の基礎控除があり、こどもNISAの年間枠60万円はその範囲に収まります。ただし「あげた・もらった」の記録が大切です。贈与契約書を作り、振込で渡して通帳に記録を残す——この一手間が、あとで家族を守ってくれます。
Q. 子どもには内緒で運用して、成人したら渡すのはだめ?
A. おすすめしません。本人が知らない口座は、税務上「名義だけ子どものお金(名義預金)」と見られるおそれがありますし、教育の効果もゼロになってしまいます。運用が「自分ごと」になった瞬間から、子どもは驚くほど関心を持ちますよ。
Q. 失敗させるのが、やっぱり怖いです。
A. その気持ち、よくわかります。だからこその2階です。お小遣いやバイト代の範囲なら、減っても生活は何も壊れません。若いうちの小さな損は、いちばん安い授業料——大人になってから大きな金額で初めて転ぶほうが、ずっと痛いですから。
まとめ:奪ってはいけないのは「金額」ではなく「関与」
- 「渡すこと」と「育てること」は別の話。二階建てで両方叶えられます
- 1階(親のバトン)は堂々と。ただし隠さず、年に一度は一緒に見る
- 2階(本人の実験室)は小さく。選ぶのも転ぶのも本人に任せる
親が子どものNISAをしてあげることは、教育の機会を奪う行為ではありません。奪ってしまうとしたら、それは金額ではなく関与——見せること、語ること、一緒に悩むことを親が手放したときです。
逆に言えば、そこさえ手放さなければ、口座の名義が何であれ、お金の教育はちゃんと届きます。焦らず、じっくり・こつこつ。あなたの家の「二階建て」、無理のない一歩から始めてみてくださいね。
※この記事は一般的な情報であり、特定の金融商品や投資行動をおすすめするものではありません。こどもNISAは2027年開始予定の制度で、今後の法令等により内容が変わる可能性があります。投資には元本割れのリスクがあります。贈与や税金の個別のご相談は、税理士などの専門家にご確認ください。
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