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「あの日、気づけていたら…」母の脳梗塞体験から学ぶ初期症状と予防の知識

■ あの日の後悔から始まった私の気づき

数年前のある日、母が「温泉に行きたい」と私の家にやってきました。
その日は楽しみにしていた日帰り温泉。私は母の口の動きに少し違和感を覚えましたが、「ちょっと疲れてるのかな」と深く考えることはありませんでした。

目的地までの1時間、車内では普段と変わらない会話が続いていましたが、温泉に着き、お風呂に入っていた時、母が「腕が上がらない」と言ったのです。最初は軽い筋肉痛かと思いました。でもその言葉がだんだん不安を呼び、すぐに周囲の方が異常に気づき、救急要請。
ドクターヘリで搬送された病院で告げられたのは「脳梗塞です」という診断でした。

あの時、もし私にもっと脳梗塞の知識があったなら、
あの“違和感”にもっと早く気づけていたなら――。

今もその後悔は胸に残っています。

この体験を通して、私は「脳梗塞の初期症状を知ること」の大切さを心から感じました。
この記事では、母に現れていた初期症状、そして脳梗塞を防ぐために今できることを、私自身の経験と共にお伝えしたいと思います。

目次

■ 体験談から見る ― 母に現れていた初期症状

母に最初に現れていたのは、本当に「ささいな違和感」でした。

● 表情のぎこちなさ

私が最初に「あれ?」と感じたのは、母の口元の動きでした。
普段はよくしゃべり、よく笑う母ですが、その日はなんとなく口角の動きが鈍いように見えたのです。話すときの口元が少し歪んでいるようにも思えました。今思えば、呂律が回っていなかったのす。

でも私はその時、
「年齢のせいかな?」
「少し疲れているだけかも」
と自分に言い聞かせてしまいました。残念なことに、私は本当に無知だったのです。脳梗塞など身近に起こるとは思ってもいませんでした。

● 片腕が上がらない

温泉に到着し、着替えをしようとしたとき、また湯船で、母が「右腕が上がらない」と言い出しました。
「どこか打った?」「寝違えたのかな?」と聞いても、本人もよくわからない様子。
その後、右腕を動かすのがどんどん困難になっていきました。お風呂から上がる時には、すでに腕が上がりにくくなっていました。そこですぐスタッフの方を呼び症状を説明しました。

● 話し方が少し遅くなっていた

今思えば、母の言葉のテンポ反応が、普段よりわずかに遅れていました。
でも、会話は普通に成立していたため、当時の私はまったく気に留めていなかったのです。


こうして振り返ると、脳梗塞の兆候は確かに出ていたのに、私はそれを見逃してしまいました。
それは、症状が重くなってからでないと「異常」と気づきにくいものばかりだったからです。

ですが、医師から時間が勝負のようなことを言われました。

「初期症状を知っていたら、もっと早く治療に入れた可能性が高かったのに」

後悔先に立たずです。

■ 覚えておきたい ― 脳梗塞の初期症状は「FAST」でチェック

脳梗塞は、一刻を争う病気です。
発症から治療までの時間が短ければ短いほど、後遺症を最小限に抑える可能性が高くなります。

そのためにも、ぜひ知っておいていただきたいのが
脳卒中の初期症状を判断する「FAST(ファスト)」チェックです。


● F = Face(顔)

「笑ってみて」と言ってみてください。
口元がゆがんでいないか?
片方の口角だけが下がっていないか?

※母もこの症状が出ていましたが、私には「なんとなく」くらいにしか見えませんでした。


● A = Arm(腕)

両腕を前に出してもらってください。
片方の腕が上がらなかったり、途中で下がってきたりしないか?

※温泉で母が「腕が上がらない」と言ったのは、まさにこの症状でした。


● S = Speech(言葉)

話しかけたり、簡単な言葉を繰り返してもらってください。
ろれつが回っていない、言葉が出にくい、会話が不自然でないか?

※母は言葉が少しゆっくりしていましたが、会話が成立していたことや私の無知なため気づけませんでした。


● T = Time(時間)

1つでも当てはまったら、すぐに119番へ
脳梗塞は、発症から4,5時間以内の処置がカギなります。

  • t-PA静注療法の鍵となる時間:発症から4.5時間以内
  • 血管内治療(血栓回収療法)の適応:発症から6時間以内(条件により24時間以内まで拡大)

脳梗塞は「時間との闘い」と言われ、発症からできるだけ早く専門医療機関を受診することが、後遺症を最小限に抑えるために極めて重要です


私たち家族は、この知識を事前に持っていなかったことで、病院に着いたのがやや遅れてしまいました。
その結果、母は右半身麻痺が残りました。

誰にでも起こり得るからこそ、「FAST」は家族みんなで是非とも共有しておきたい知識ですね。


■ 脳梗塞を防ぐために ― 日常でできる4つの予防習慣

脳梗塞は、「ある日突然」起きるもの。
でも実際には、生活習慣の積み重ねが発症のリスクを高めていることが多いのです。

母が倒れた後、私は医師やリハビリの方々と話を重ねる中で、日常生活の中で予防できることがたくさんあると気づきました。

ここでは、誰でもすぐに実践できる4つの予防習慣をご紹介します。


① 血圧管理をしっかりと

脳梗塞の最大のリスク要因は、高血圧
特に高齢になると血管ももろくなり、少しの変化が命取りになることもあります。ウォーキングや軽い有酸素運動を週に150分以上行うのが目安です。日常生活でも階段を使う、一駅分歩くなど、体を動かす機会を増やしましょう。

  • 定期的な血圧測定(自宅での朝晩の記録が理想)
  • 減塩(1日6g未満を目標に)
  • 適度な運動(無理のない散歩など)

母も高血圧の治療をしていましたが、正直なところ、家族全体での意識は高くなかったと思います。薬を飲んでいたことで安心していたのかもしれません。


② 水分をしっかりとる習慣

水分不足も、血液をドロドロにし、血栓(血のかたまり)ができやすくなります。

  • 朝起きてすぐにコップ1杯の水
  • 食事の前後にも意識的に水分補給
  • 特に冬場や高齢者は「喉が渇いた」と感じにくいので注意

③ 栄養バランスの良い食事

塩分、脂質、糖分を控えめにしながらも、栄養価の高いものを意識します。野菜や果物、魚、大豆製品などを積極的に摂り、塩分や脂肪分の摂りすぎを控えましょう。特に1日350g以上の野菜摂取や、週2回以上の魚の摂取が推奨されています

  • 野菜や海藻をしっかりとる
  • 脂っこい揚げ物は控える
  • 白米よりも玄米や雑穀米なども取り入れてみる

④ ストレスをためない・質の良い睡眠

過度なストレスや睡眠不足も、血圧や血管に負担をかけます。ストレスは血圧上昇や血管収縮を招きます。趣味やリラックス法を取り入れ、7~8時間程度の質の良い睡眠を確保しましょう

  • 規則正しい生活リズム
  • 笑顔や趣味の時間を意識的に持つ
  • 「頑張りすぎない介護」を心がけることも、本人にも家族にも大切です

脳梗塞の予防は、特別なことではなく、日々の小さな積み重ねから始まります。これらの習慣を毎日の生活に取り入れることで、脳梗塞のリスクを大きく減らすことができます。
私自身、母の介護をしながら、「もっと早く意識できていれば…」と思うことが何度もありました。

だからこそ、この記事を読んでくださったあなたには、ぜひ今日から「できること」から始めていただきたいと思っています。。

■ まとめ ― 気づけなかった悔しさを、誰かの「気づき」に変えたい

母が脳梗塞を発症したあの日。
私は「なんとなくの違和感」を見逃してしまい、今もその後悔を抱えています。

でも、同じような経験をする人が少しでも減るように、
この体験を言葉にすることが、私にできる小さな責任だと思うようになりました。

  • 脳梗塞は、初期症状の見極めが命を救うカギになります
  • 「FASTチェック」は誰でもすぐに実践できる簡単な方法
  • 日頃の生活習慣を少し意識することで、予防は可能です

このブログが、あなたやあなたの大切な人の命を守る“気づき”となれば幸いです。

そして私自身、これからも介護の現場で学んだこと、感じたことを発信しながら、
同じような立場にいる方の心に、そっと寄り添える存在になれたらと思っています。

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