前回、「家計管理の本当の目的は、大切なことにお金を使うこと」というお話をしました。
今日はその続きとして、「貯める」ことについて、もう少しゆっくり考えてみたいと思います。
貯金と聞くと、歯を食いしばって我慢して、コツコツ積み上げる——そんなイメージがあるかもしれません。でも私の場合、振り返ってみると、少し違っていたのです。
「貯める」ことは、何のため?
そもそも、なぜお金を貯めるのでしょうか。
老後のため、もしものときのため。いろいろな理由があると思います。私自身は今、「いざというとき、迷わず大切なことにお金を使うための土台」が、貯金なのだと感じています。
生活防衛資金、という言葉があります。急な病気や、収入が途切れたときに、暮らしを守ってくれるお金のことです。これがあるかないかで、心の余裕がずいぶん変わってくる——私はそれを、母の介護を通して実感しました。
母を自宅で介護すると決めたとき
母を自宅で介護することになったとき、私が一番に考えたのは「トイレと水道」のことでした。
歩くのが難しくなったとき、まず必要になるのがお手洗いです。簡易トイレは、介護補助の費用を使って、ひとまず用意することができました。
でも、もうひとつ気になっていたのが、洗面台でした。母の部屋に洗面台があれば、デイサービスから帰ってすぐに手を洗えます。介護する私の側も、すぐ手を洗えたり、歯磨きの道具を置いたりできて、母専用の場所として使える。そう考えて、思いきって部屋に洗面台をつくることにしました。
それから、母を病院や外出に連れて行きやすいように、中古ではありますが、福祉車両に買い替えました。
どれも、決して小さくない出費です。でも、慌てずに「母のために、これは必要だ」と判断できたのは、手元に使えるお金があったからでした。
「貯める」というより「貯まっていた」
ここで、ひとつ気づいたことがあります。
私は、母のために必死に貯金をしていたわけではありませんでした。母にも自分の蓄えがあり、私も若いころから投資を続けていました。その積み重ねが、気づいたときには、母のために使えるくらいのお金になっていたのです。
「貯める」というより、「貯まっていた」。
若いうちに一生懸命働いて、ある程度のまとまったお金をつくり、それを投資で少しずつ育ててきた。そうしているうちに、いざ母に必要なときが来たら、ちゃんとそこにお金があった——そんな感覚に近いのです。
肩に力を入れて「貯めなきゃ」と頑張り続けるのは、正直しんどいものです。でも、暮らしの中で自然と土台を整えておくと、必要なときに、そっと支えてくれる。私はそう感じています。
どのくらい備えればいい?
「では、いくら貯めればいいの?」と思われるかもしれません。
一般的には、生活費の3か月から半年分が、生活防衛資金の目安とされています。介護や持病など、まとまった出費が見込まれるご家庭なら、もう少し多めに考えておくと安心です。
ただ、私が一番大切だと思うのは、金額そのものよりも「気持ちの余裕」です。いくらあれば絶対に安心、という正解はありません。それでも、少しでも土台があると、「いざというとき、なんとかなる」と思える。その安心感こそが、貯めることの本当の意味なのかもしれません。
まとめ:土台があるから、迷わず使える
貯めることは、ため込むことが目的ではありません。
大切な人のため、大切なことのために、迷わずお金を使う。その決断を、そっと後ろから支えてくれるのが、生活防衛資金という土台です。
そして、その土台は必ずしも「我慢して貯める」だけでできるものではなく、若いうちの働きや、コツコツ続けた投資の積み重ねからも育っていきます。
今は貯めるばかりに思えても、それはきっと、いつかの「大切なこと」につながっています。あなたの土台づくりは、どんなふうに進んでいますか。
お金との向き合い方を、一緒にゆっくり考えてみたくなったら、いつでも気軽に立ち寄ってくださいね。